FM802 RADIO MAGIC@大阪城ホール
大阪のFM局、FM802の開局20周年記念ライブへ行く。このラジオ局は結構面白いライブイベントをやっていて、東京に住んでいる頃に何度か足を運んでおり、ここは私の趣味に合うかなあと思っていたのだが、実際大阪に来てみると、一度も放送を聴いたことがないという。ラジオを聴くという習慣が、この数年ですっかりなくなってしまったもので。でも、こういうライブを観てみると、ラジオってやはりよいなと思えてくる。またラジオを聴く生活をはじめてみようかと。
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ライブであるが、出だしは藤井フミヤと、シークレットゲストの浜崎貴司で、RCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」から。今回のテーマのラジオにからめて、そして先日亡くなった忌野氏に捧げるという意味も含めた、良いスタートである。FLYING KIDS再開後の浜崎氏は一度聴きたいと思っていたので、このゲストは私としては大変嬉しい。そのまま浜崎氏が残って「幸せであるように」へ。バンドの音も、若干ファンクっぽい濃さには欠けるものの、なかなかよい感じである。浜崎氏が1曲で終わってしまったのが、大変残念であった。もう1曲、出来ればファンキーなのをやってほしかった。
続いてはSEAMO。音は聞いたことがあるが、ライブで観るのは初めて。ラップの形式で語数の多い歌詞が歌われ、内容自体はシンプルで分かりやすいのだが、なぜか全然心に残らない。言葉が右の耳から入って左の耳から抜けていく感じ。単純なメッセージである分、“ひっかかる”(=内容をこちらで想像しなければならない)部分がほとんどなく、また歌詞からみえてくる“風景”のようなものもないのである。リズムもシンプルで、気持ちはよいものの、変化というか展開に欠ける感じがして、私にはあまり面白くは感じられなかった。だが、客席にはかなり多くのファンがいるようで、歓声は聴こえるし、立ち上がって歌に合わせて踊っている人もいる。こういう気持ちはよいが分かりやすくてひっかからない曲が、今の若者には面白いのだろうか。まるで、ケータイ小説が売れている状況を観ているかのようである。私が歳を取ったから、理解出来ないのかもしれない。でも、こういう曲がシーンを占めるとなると、音楽はすごく面白くなくなる気がするのだが。
次も若手で、青山テルマ。曲はメディアを通して聴いていて、それなりに悪くはないと思えていたのだが、こうしてライブで聴いてみると、歌の力が弱過ぎる。バックの音に完全に埋もれているし、コーラスの方が目立つような印象。歌唱力がある人というイメージがあったのだが、それは録音上だけなのだろうか。若手が続いて清水翔太へ。歌とラップが混ざったような曲なのだが、この人も歌が弱いと感じた。声がバックに埋もれていて、“立って”いないのである。メロディはそれなりに気持ちよいのだが、詞はシンプルでこちらも“ひっかかる”ところがない。この辺は、大変申し訳ないのだが、家でラジオやテレビに接しているように、完全に聞き流してしまった。でも人気はあるようだし、単に知らないアーティストだから面白いと思えないのだろうか。
今日的な人の後は、最初にも出た藤井フミヤが再登場。「True Love」のようなよく知られた曲だったのだが、さすがの堂に入った歌いっぷり。ライブで聴くのは初めてだと思うが、結構“聴かせた”のには驚いた。最後のアップテンポの曲では、キザなパフォーマンスもみせたりして、彼ならではの世界がみられた。前半最後は、シークレットゲストの平井堅。彼も聴くのは初めてだったが、圧倒的な歌唱力で、人気があるのが理解出来る気がした。特に桑田佳祐カバーの「白い恋人達」は、アレンジは原曲に近いながらも、その歌唱力で完全に彼の世界をつくり上げているのがすごい。
後半は、一青窈からスタート。「ハナミズキ」「もらい泣き」という代表曲を歌ったのだが、大変聴かせるものであった。歌はもちろん、本人の発する雰囲気も、大変個性的で強いものを感じた。ステージ上を所狭しと動き回る様子も含めて、短い時間ながらも興味深い演奏が聴けて、面白かった。
続いては、大御所の小田和正。毒のある(?)MCも含めて、これぞという見事なライブ。出だしこそ若干声が出ていない感じだったが、徐々に力強く澄んだ歌声が出てきて、聴いていて圧倒される。3曲目は、一青窈と佐藤竹善がコーラスに加わって、オフコースの「君住む街へ」。これも実に聴かせる歌で、じっくりと聴き入ってしまった。さらに、シークレットゲストの松たか子を迎えてのデュエット。小田さんは後ろで支える感じであったが、これもなかなか良い感じ。ここで小田さんが退場して、松たか子のデビュー曲「明日、春が来たら」。松さんの初期の曲は結構好きで、特にこの曲は変化の少ないミニマルなメロディながらも聴かせる曲で気に入っていたので、これが聴けたのは大変ありがたかった。歌声も迫力があって見事。
若干の機材展開の時間の後、本日の私の一番の目当てであるSing Like Talkingに。出だしはなんと「Seasons of Change」。一応シングル曲ではあったが、そんなに知られているわけではないこの曲から始めるとは。このあたりが実にSLTらしい。またこの曲は、「人物や事象の移り変わり」と「その中でも変わらない姿勢」のようなものを歌っているから、5年半も待たせたファンへのメッセージであるかのようにも取れる。さらには、今日のバックがあれだけの見事なメンバーであることも踏まえて、こういう個々の演奏力があってこそ活きる曲を選んだのではないか。アレンジ面でも、オリジナルでは西村氏がギターで弾く間奏部分を、あえて意表をついて本田雅人(sax)に吹かせるあたりは、普通に無難に演奏はしないという、SLTらしさが出ていたように思う。でありながら、最後の部分では西村さんに思う存分ギターソロを弾かせるあたりも、実に彼ららしい。
次は、FM802をきっかけに人気が出たという「Hold On」に触れたMCから、その頃の代表曲「With You」へ。この曲も往年のスケールの大きな演奏が聴けて嬉しかった。昔のイメージや思い出がいろいろと蘇ってきて、ちょっとうるっと来てしまったくらいである。間奏の一番盛り上がる部分でのコーラスを、千章さん一人が歌ったところも、なんか昔のSLTが思い出された。必ずしも上手い歌声ではないのだが、やはりあの声がないとSLTらしくないように感じられるのである。ぐっと来ているところのエンディングで、SEAMOがラップで参加したのだが、正直それには少々冷めてしまった。あのまま展開して終わってくれれば、ぐっと感動出来たと思うのだが。まあ、逆にそんなふうに終わっていたら、感極まって泣いてしまったかもしれないので、それが回避出来た意味ではよいのかもしれないが。
最後は、これは予想通りの「Spirit of Love」。これまでに何度も聴いていて、以前は正直少々飽きてもいたのだが、こうして久しぶりに聴いてみるとやはり良い曲である。かつ、最後の部分では、バックメンバーも全員参加しての分厚いコーラスを聴かせるという。この辺も昔のライブそのままであり、大変懐かしく、嬉しいものであった。
最後は、参加者全員で、忌野氏のつくったFM802キャンペーンソング「Oh! Radio」を。個々人が歌い、全員で歌うだけでなく、2名程がコンビになって歌う部分も多くあって、様々な組み合わせが楽しめたのもよかった。
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若干不満なパートもあったはあったが、全体としては大変面白いライブだったと思う。歌手、バックメンバー、それに企画側も含めて、関わった人達の音楽への愛情があふれているかのような、素敵なものであった。こういう暖かい印象を残して終わるライブも、なかなかないのではないか。
個別には、これまで聴いたことないアーティストをいくつも聴けたことがよかったし、バックメンバーの見事な演奏も素晴らしかった。バックでは、久しく聴いていなかった本田雅人氏のsaxを堪能出来たのもよかった。結構吹く部分が多くて、彼ならではのテクニカルなフレーズとクリアな響きを大いに楽しめた。
目当てのSLTに関しては、先にも書いたように、このライブが決まった時には期待と不安が入り交じった心境だったのだが、そんな不安を吹き飛ばすような、大変素晴らしいライブであった。なんといっても、SLTはやはりSLTのままであったことが、嬉しかった。5年半活動していなくても、彼らの音楽に対するスタンスは変わっていないのが、確認出来たというか。このあと彼らの活動がどうなるかはわからないけれども、今日こんな形で聴けたということで、とりあえずもうしばらくは信じて待っていられそうな気がする。
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